アズールレーン5周年記念

アズールレーン✕島風 琉球泡盛

  • 石川酒造場「アズールレーン×島風 琉球泡盛」

  • 酒の世界は醸造酒と蒸留酒に大別される。日本酒やビール、ワインは醸造酒で、蒸留酒には焼酎やウィスキー、ウォッカなどがあげられる。日本における蒸留酒は、特に南国で広く親しまれているが、中でも沖縄県で作られる泡盛の知名度は抜群。その本場で泡盛「島風」を展開する石川酒造場営業部の銘苅淳(めかる あつし)氏にお話を伺った。
特注のシーサーが出迎える石川酒造場の工場建屋。移転して約30年と比較的新しい建物が、沖縄の空や自然ととてもマッチしていた。
沖縄県 石川酒造場
インタビュアー:小田島愛

――まずは泡盛というお酒について教えて下さい。

銘苅氏「泡盛は、お米を原料にして造る蒸留酒です。特にタイ米(長粒米)を使用して造られます。お米を蒸したあと、黒麴菌を散布して米麹を造ります。そのあと、米麹とお水と酵母を加えて、アルコール発酵させます。黒麴菌がつくった酵素でお米のでんぷんを分解する糖化と、分解された糖分を酵母が食べてアルコールをつくるアルコール発酵が並行して行われます。また、黒麴菌がクエン酸をつくります。このクエン酸があるおかげで、高温多湿の沖縄で雑菌に汚染されずお酒造りが可能になっております。」

沖縄の風土にあわせて作られる泡盛。黒麹菌とタイ米との出会いが、長く愛される郷土の酒を生んだのである。

――焼酎も蒸留酒ですが、泡盛は焼酎とは違うのですか?

銘苅氏「まず大きな違いとしては、泡盛は黒麴菌しか使えない点です。他の焼酎は、黒麴菌の他に、白麴菌や黄麹菌も使うことができます。また、泡盛は全麹仕込みでなければなりません。全麴仕込みとは、発酵の原料を米麹のみで造る製法のことです。他の焼酎は、発酵の途中で蒸した原料を入れます。米焼酎なら蒸した米を、麦焼酎なら蒸した麦を、芋焼酎なら蒸した芋を、といった感じで米麹以外の原料を仕込んでいきます。泡盛は、黒麴菌の米麹100%で造られた蒸留酒になります。」

銘苅氏のインタビューを通じて、泡盛の歴史は沖縄の歴史であると同時に、アジア世界での日本の交易の広さを示す貴重な食文化でもあることを知る。

――タイ米を使う理由はあるのですか?

銘苅氏「タイ米を使う方が、古酒にしたときに香りが豊かになるので、タイ米を使っています。タイ米(長粒米)は、表面にタンパク質が多く、日本米に比べて香りの素になるものが多いんです。蒸留酒の製法は、15世紀初めまでにタイから沖縄に伝来という説が有力です。この時にタイ米や蒸留方法、そして貯蔵用の甕(かめ)が持ち込まれましたが、発酵に用いる麹は、沖縄の気候に適した黒麹菌が使われるようになったそうです。」

沖縄を中心に同心円状に距離を取ると、九州と台湾は同じ距離にあり、東京よりもフィリピンの首都マニラや香港の方が近い。沖縄は日本の南端であると同時に、東アジアの中心に位置する文明の十字路でもある。その沖縄で育まれた泡盛は、アジアの心が込められた酒と言えるだろう。

泡盛の製造工程は、米を蒸して黒麹を作るこの場所から始まる。日本酒と異なり蒸留酒なので、極端な精米作業は発生しない。

――石川酒造場のことをお聞かせ下さい。

銘苅氏「戦後の1949年(昭和24年)に那覇市の首里寒川という場所で創業しました。そして1990年に事業規模拡大のために、現在の場所に移転してきたんです。沖縄の中心である那覇市首里では、工場を拡張することができず、西原町に移転した経緯があります。2003年には、ISO9001を認証取得しまして、世界基準で品質を管理しております。」

――石川酒造場さんの泡盛の特徴を教えて下さい。

銘苅氏「弊社では、昔ながらの製法である『甕仕込み製法』と近代的な製法である『ステンレスタンク仕込み製法』の二種類の泡盛を製造しております。伝統製法である『甕仕込み製法』は、発酵の管理に高い技術力を要します。その高い発酵技術を用いて近代的な『ステンレスタンク仕込み製法』の泡盛も造られております。『島風』は、この製法で造られたお酒です。温故知新の精神で、伝統と革新の両方の造りを行っています。」

出荷を待つ泡盛が保存されているタンク。大きさに圧倒されるが、このタンクで熟成させ出荷される。

――甕を見させていただきましたが、伝統製法そのままという印象でした。

銘苅氏「『甕仕込み製法』で造られる泡盛は、一部貯蔵も甕で行います。泡盛は、寝かせば寝かすほど味わいが丸くなり、香りが豊かになります。甕貯蔵古酒には甕貯蔵の良さがあり、ステンレスタンク貯蔵古酒には、ステンレスタンク貯蔵の良さがあります。ステンレスタンクに貯蔵すると、お酒本来のもつ特徴が際立つため、『ステンレスタンク仕込み製法』での良質な発酵が求められます。『島風』には、10年古酒を20%ブレンドしており、スッキリした味わいの中にも古酒の甘さを感じられる泡盛です。」

3年以上寝かせた泡盛は「古酒(クース)」と呼ばれ、その酒蔵の看板の酒となる。古酒の世界は奥が深く、それこそ琉球世界の酒文化の神髄であり、容器ごとに変わってくる古酒の特徴を理解してブレンドを行い、更に味を深めるのが職人の腕の見せ所なのだという。

出荷を待つ泡盛が保存されているタンク。大きさに圧倒されるが、このタンクで熟成させ出荷される。
甕ごとに異なる酒の特徴を掴み、ブレンドさせる技術にこそ、泡盛の技が集約されているという。

―石川酒造場では泡盛以外にもいろいろな飲料を展開されていて驚きました。

銘苅氏「日本酒は酒を絞ると酒粕が残りますが、泡盛でも蒸留した後に大量のもろみ粕が残されます。弊社は、このもろみ粕を絞った『もろみ酢』の商品化を行った元祖の蔵元です。また、『もろみ酢』をさらに乳酸菌で発酵させた乳酸菌飲料『美らBio(チュラビオ)』など、泡盛以外の商品開発も行っています。泡盛の製造過程で出る副産物も有効利用し、原料廃棄物ゼロを目指しています。」

――今回のコラボの泡盛「島風」について教えて下さい。

銘苅氏「泡盛は沖縄では日常的に飲まれる、生活に密着したお酒です。『島風』はそうした日常使いに焦点を当て、飲みやすさを重視しているブランドです。」

――「島風」という名前の由来は?

銘苅氏「沖縄らしさ、島を渡って吹いてくる爽やかな風と、このお酒のスッキリとした味わいを関連付けた名前ですが、有名な軍艦と同じというのは後に知りました。でも、それが今回のコラボレーションの縁を繋いでくれたのですから、とても感謝しています。」

世界遺産の中城城から南方を一望。入り江の右手奥のあたりに石川酒造場がある。
工場敷地の隅々まで、沖縄と泡盛への細やかな愛情と気配りが感じられた石川酒造場。
「このコラボをきっかけに、新しい酒の世界を広げていただければ最高です(銘苅氏)」

――最後に、「アズールレーン」のコラボレーションについて、一言お願いします。

銘苅氏「『島風』はとても人気のキャラクターと伺っています。泡盛は有名なお酒ですが、実は県内消費が8割を超え、残りは観光のお土産に使われるもので、ほぼ全量というお酒です。初めての泡盛が沖縄土産だったという方も多いと思います。『島風』はスタンダードな味わい、飲みやすさを意識しているので、最初の泡盛にぴったりです。ソーダ割り、フルーツを使ったカクテルなども簡単に作れますし、風味を楽しめるロックもオススメです。今回のコラボを通じて、泡盛の世界に興味をもたれたら、ぜひ沖縄にも訪れて、本場の泡盛を楽しんでいただけたらと思います。」